「貧乏な人とは、少ししか物を持たない人ではなく、かぎりなく多くを必要とし、もっともっとと欲しがることである」
世界でもっとも貧しい大統領のスピーチより
世界でいちばん貧しい大統領「ホセ・ムヒカ前大統領」をご存知の方も多いかもしれませんね。
2012年6月、ブラジルのリオデジャネイロで国際会議が開かれました。
環境が悪化した地球の未来を話し合うための会議です。
スピーチはアルファベット順で行われ、最後になって南米の小国、ウルグアイの大統領が登壇しました。
質素な背広にネクタイなしのシャツ姿の大統領。
そう、彼は世界でいちばん貧しい大統領です。
給料の大半を貧しい人々に寄付し、町から離れた郊外の農場で妻と一緒に花や野菜などを育て、古びた愛車を自ら運転して大統領の仕事に向かいます。
演説が始まりました。
会場の人々は、小国の大統領の話しにそれほど関心は持っていないようでした。
けれども、演説が終わったとき会場からは大きな拍手がわきおこったのです。
■世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ 絵本の内容

この本は、世界でいちばん貧しい大統領と呼ばれているウルグアイ第40代大統領ホセ・ムヒカ氏のリオ会議(Rio+20)でのスピーチを絵本にしたものです。
スピーチの内容は素晴らしいことはもちろん、素敵な絵と小学生にも読めるように漢字にはルビがふってあります。
子供から大人までみんながこのスピーチの素晴らしさを共有できるように作られているのです。
その一部を抜粋して紹介します。
私はみなさんに問いかけます。
もしも、インドの人たちがドイツの家庭と同じわりあいで車を持ったら、この地球に何が起きるでしょう。私たちが息をするための酸素がどれくらい残るでしょうか。
70億や80億の人類が、いままでぜいたくの限りをつくしてきた西洋社会と同じように、ものを買ったり無駄遣いをしたりできると思いますか。そんな原料がまだこの地球にあると思いますか。
いまの文明はわたしたちがつくったものです。わたしたちは、もっと便利でもっと良いものを手に入れようと、さまざまなものをつくってきました。おかげで、世の中はおどろくほど発展しました。
しかしそれによって、ものをたくさんつくって売ってお金をもうけ、もうけたお金でほしいものを買い、さらにもっとたくさんほしくなってもっと手に入れようとする、そんな社会を生み出しました。
人生は短く、あっというまです。そして、命より大事なものはありません。命は基本的なものです。
しかし世界をおそっているのは、じつは欲深さの妖怪なのです。
古代の賢人エピクロスやセネカ、そしてアイマラ民族は、つぎのように言いました。
「貧乏な人とは、少ししか物を持たない人ではなく、かぎりなく多くを必要とし、もっともっとと欲しがることである」
そのことばは、人間にとって何が大切なのかを教えています。
わたしが話していることは、とてもシンプルなことです。
社会が発展することが、幸福を損なうものであってはいけません。発展とは、人間の味方でなくてはならないのです。
なぜなら、幸せこそがもっとも大切な宝だからです。
世界でいちばん貧しい(質素な)大統領ホセ・ムヒカ前大統領は世界の人々に「生きる目的」について、あるいは「幸せな時間の使い方」について問いかけてくれました。
ホセ・ムヒカ前大統領の本音の叫びは、吾輩たちにひとつの機会を与えてくれたのではないでしょうか。
大量に消費する為に、たくさん働くことが吾輩たちを本当に幸せにしてくれるはずはありません。
吾輩たちが本当に幸せに生きていくには、自分の本音を知り、その為に限りある時間を使うことなのかもしれません。